関節リウマチ医学最新ニュース（４６）
活動性関節リウマチ（RA）に脾臓チロシンキナーゼ阻害薬新たな治療標的薬の候補に
Brigham and Women's病院（BWH）およびハーバード大学（ともにボストン）のMichael E. Weinblatt教授らは，活動性関節リウマチ（RA）患者189例に対して脾臓チロシンキナーゼ（Syk）阻害薬が12週間で有意な臨床効果をもたら したとするプラセボ対照ランダム化試験の結果をArthritis and Rheumatism（2008; 58: 3309-3318）に発表しました。
線維芽細胞様滑膜細胞において腫瘍壊死因子（TNF）α誘導サイトカインとコラーゲン溶解酵素（メタロプロテアーゼ）の生成で脾臓チロシンキナーゼ活性化が重要な役割を果たすことが以前から知られていました。
脾臓チロシンキナーゼは細胞質チロシンキナーゼとしてB細胞，肥満細胞，マクロファージ，好中球などの白血球細胞における免疫レセプター・シグナル伝達の重要な仲介者（メディエータ）です。
また関節リウマチ（RA）滑膜に発現することが知られている。変形性関節症（OA）患者の滑膜組織と比べて，関節リウマチ（RA）の滑膜組織ではリン酸化脾臓チロシンキナーゼレベルが上昇します。この脾臓チロシンキナーゼをターゲットにした新薬が関節リウマチ（RA）の治療薬として期待されると結んでいます。
しかし、これは関節リウマチの根本治療からほど遠いものです。脾臓チロシンキナーゼを上昇させる原因を減らすか、除去しないことには、やがて薬効も切れてくるでしょう。細胞のシグナルの伝達を止めるのですから、長期的は副作用も懸念されます。しかし、これは関節リウマチの根本治療からほど遠いものです。脾臓チロシンキナーゼを上昇させる原因を減らすか、除去しないことには、やがて薬効も切れてくるでしょう。細胞のシグナルの伝達を止めるのですから、長期的は副作用も懸念されます。
論文の詳細はコチラ
→今回の研究は，メトトレキサート治療にもかかわらず高疾患活動性の関節リウマチ（RA）患者189例を対象としたプラセボ対照ランダム化試験において，脾臓チロシンキナーゼ活性代謝産物のプロドラッグでかなりの選択性を有するfostamatinib disodium（R788）の有効性と忍容性を12週間にわたり検討した。
対象関節リウマチ（RA）患者は，(1)R788 50mg2回/日(2)100mg2回/日(3)150mg2回/日(4)プラセボ―にランダム化割り付けされた。全例ともメトトレキサートと葉酸または ホリニン酸のいずれかを服用し，さらに非ステロイド抗炎症薬（NSAID）と他のいくつかの薬剤の継続を許されたが，それ以外の抗リウマチ薬 （DMARD）と生物学的応答修飾薬（BRM）はあらかじめ決めたスケジュールに従って中止した。
その結果，12週目の米国リウマチ学会（ACR）基準20％改善（ACR20）は，150mg群で72％（P＜0.001），100 mg群で65％（P＝0.008），プラセボ群で38％であり，50mg群ではプラセボ群を上回らなかった〔ACR20 32％，P＝0.56（対プラセボ群）〕。
ACR50では100mg群，150mg群，プラセボ群でそれぞれ57％，49％，19％に改善が，ACR70は40％，33％，4％に改善が認められた。
加えて，100mg群と150mg群では28関節の疾患活動性スコア（DAS 28）でも改善が認められた。 また，100mg群と150mg群では血清インターロイキン（IL）-6とマトリックスメタロプロテアーゼ（MMP）-3の濃度も有意に低下した（IL-6濃度 ：100mg群P＝0.05，150mg群P＜0.001，両群のMMP-3濃度P＜0.01）。
報告されたおもな有害事象は消化管症状（おもに下痢）と好中球減少（1,500/mm3未満）であり，いずれも用量依存的に関連した。