関節リウマチ医学最新ニュース（７４）
治療2週で関節リウマチ（RA）改善効果，新規経口JAK阻害薬tofacitinib
経口のJanus Kinase（JAK）阻害薬が関節リウマチ（RA）の次世代の治療薬として注目されています。欧州リウマチ学会（EULAR 2011）で，JAK阻害薬tofacitinibの第Ⅲ相臨床試験として，抗リウマチ薬（DMARD）または生物学的製剤などで効果不十分な症例を対象に抗リウマチ薬（DMARD）との併用療法による有用性を検討し、その成績が発表されました。
それによると，1次評価項目の解析では，JAK阻害薬tofacitinib 5mgまたは10mgの1日2回（BID）投与群のいずれも，プラセボ投与群に比べて関節リウマチ（RA）の疾患活動性・症状・身体機能を有意に改善したといいます。
今後は，生物学的製剤と経口のJAK阻害薬との間で骨破壊抑制効果などを比較した試験などが必要となります。
副作用は他の免疫抑制剤と同じく、頭痛，嘔気，好中球数減少，脂質異常症，貧血，感染症などがあります。関節リウマチ（RA）の次世代の新しい治療薬というのならば、効果がありかつ副作用が低い薬剤でなければ意味がないでしょう。コスト面も気にかかります。
試験の詳細はコチラ
→ 試験の対象は，1剤以上の抗リウマチ薬（DMARD）または生物学的製剤などで効果不十分であった関節リウマチ（RA）患者792例で，抗リウマチ薬（DMARD）との併用療法として（1）tofacitinib 5mg（BID），（2）tofacitinib 10mg（BID），（3）プラセボ―に症例数が2：2：1となるようにランダムに割り付けて3群とし，プラセボ群に関しては3カ月時点で不応例（圧痛関節・腫脹関節数の改善が20％未満）をtofacitinib 5mgまたは同10mg投与に盲検法で切り替え，6カ月時点で残りのすべての症例を同様に盲検法で切り替えて，さらに6カ月間の経過を追った。
1次評価項目は，（1）6カ月時点における米国リウマチ学会コアセット改善基準20％以上（ACR20）達成率，（2）ベースラインから3カ月目における健康評価質問票機能障害指数（HAQ-DI）の改善度，（3）6カ月目における赤血球沈降速度（ESR）を用いた28関節から成る疾患活動性スコア〔DAS28-4（ESR）〕2.6未満（寛解）達成率，（4）安全性および認容性―とし，2次評価項目は12カ月を通したACR20，50，70とDAS28-4（ESR）の達成率とした。
なお，各群の平均年齢は50～53歳，女性の割合は75～84％，平均罹病期間はそれぞれ8～10年であった。
1次評価項目の結果では，6カ月時点ACR20達成率はプラセボ群の31.2％に比べ，tofacitinib 5mg群52.7％，同10mg群58.3％で，それぞれ有意に高いことが認められた（それぞれP＜0.0001）。
ベースラインから3カ月目におけるHAQ-DIの改善度も，tofacitinib群ではそれぞれ－0.46，－0.56で，プラセボ群の－0.21に比べ有意に高いことが分かった（それぞれP＜0.0001）。
6カ月目におけるDAS28-4（ESR）2.6未満（寛解）を達成した者の割合は，プラセボ群の2.7％に比べてtofacitinib 5mg群11.0％，同10mg群14.8％で，それぞれ有意に高いことが認められた（5mg群：P＜0.001，10mg群：P＜0.0001）。
tofacitinibの安全性に関しては，これまでに有害事象として頭痛，嘔気，好中球数減少，脂質異常症，貧血，感染症などが指摘されてきたが，今回の試験結果では，既知のプロファイルと一致し，新たな懸念材料は認められなかった。好中球数減少，血清クレアチニン上昇，LDLおよびHDLコレステロール上昇はtofacitinib投与3カ月後で認められ，その後12カ月後まで一定していた。
死亡は4例で，2例はtofacitinib投与中，2例は同薬中断後のフォローアップ中の死亡であった。これら4例の直接の死因は頭部外傷，弁疾患による心不全，関節リウマチ（RA）増悪，呼吸不全などで，呼吸不全の1例を除いては，tofacitinib投与との関連はないことが明確に検証された。
日和見感染症は帯状疱疹，クリプトコッカス肺炎がそれぞれ1例，肺結核が2例であったが，いずれも抗ウイルス薬や抗菌薬を中心とする治療により速やかに回復した。
また，肝機能異常が比較的多いことが指摘されてきたが，同試験の結果では，AST/ALT値が正常値上限の3倍を超えた上昇例は，プラセボ群に比較してtofacitinib群で特に多くはなかった。
2次評価項目の解析では，12カ月後までのACR20，50，70達成率の推移は，tofacitinib群では2週目時点ですでにベースライン時と比べて有意な改善が認められ（それぞれP＜0.0001），12カ月後まで持続していた。12カ月後までのDAS28-4（ESR）2.6未満の達成率の推移でも，tofacitinib群では3カ月時点ですでにベースライン時と比べて有意な改善が認められた（それぞれP＜0.0001）。