関節リウマチ医学最新ニュース（８０）
関節リウマチ治療薬アダリムマブ併用で「寛解の達成・維持」を証明
関節リウマチ（RA）患者の早期診断と治療に向け，昨年（2010年），米国リウマチ学会（ACR）／欧州リウマチ学会（EULAR）は「新分類基準」（入り口）と「新寛解定義」（ゴール）を提唱しました。
目標達成に向けた治療（Treat to Target，通称T2T）における関節リウマチ（RA）治療の基本的な目標は「寛解達成」と「寛解維持」であす。
今世紀に入り，わが国にも生物学的製剤が登場し，アンカードラッグであメソトレキセート（MTX）との併用により「寛解達成」と「寛解維持」が現実的なものになった。
現在，わが国で承認されている生物学的製剤は6製剤〔腫瘍壊死因子（TNF）-α阻害薬，インターロイキン（IL）-6阻害薬，T細胞阻害薬〕。
4製剤あるTNF-α阻害薬のうち，ヒト型抗体のアダリムマブ（ADA）は，メソトレキセート（MTX）との併用による有効性を検討したHARMONY試験，HOPEFUL 1試験があります。
HARMONY試験は，産業医科大学を含む国内4施設でアダリムマブ（ADA）は，メソトレキセート（MTX）併用群およびプラセボ・メソトレキセート（MTX）併用群（以下MTX単独群）における疾患活動性，関節破壊，機能障害を後ろ向きに検証したものです。
対象の163例（平均年齢58歳）の平均罹病期間は9年であり，ベースラインのsimplified disease activity index （SDAI）が 23.5と，疾患活動性の高い患者群でした。
しかし試験開始12カ月後アダリムマブ（ADA）・メソトレキセート（MTX）併用群のSDAIは7.3まで低下。約4割が臨床的寛解基準（≦3.3）を達成していました。さらに，構造的寛解〔modified Total Sharp Score（mTSS）≦0.5〕は併用群の約6割に認められ，アダリムマブ（ADA）併用により疾患活動性が高い関節リウマチ（RA）患者においても進行抑制が可能であることが分かったといいます。
また，投与開始から2年後に併用群の約5割が臨床的寛解を，約3割が臨床的寛解と構造的寛解，4分の1が臨床的寛解，構造的寛解，機能的寛解〔Health Assessment Questionnaire（HAQ）≦0.5〕の基準を満たしていることが明らかになったとしています。
同大学を含む国内94施設において，メソトレキセート（MTX）の使用経験がない発症2年以下の関節リウマチ（RA）患者334例を，アダリムマブ（ADA）・メソトレキセート（MTX）併用群（171例）とメソトレキセート（MTX）単独群（163例）に割り付け，mTSSを用いて関節破壊の進展抑制を検討したのがHOPEFUL 1試験で、現在試験継続中です。
対象の約95％は疾患活動性〔Disease Activity Score（DAS）28で評価〕の高い患者であり，発症0.3年で14カ所に軽度の関節破壊が認められました。投与開始から26週後，臨床的寛解（DAS28-ESR＜2.6）については，単独群は1割強の患者が，併用群では約3割の患者がそれぞれ達成していたといいます。さらに，mTSSにより関節破壊の進展を評価したところ，単独群では3割強に，併用群では約6割に進展抑制が認められたようです。
ちなみに欧州では，同試験と同様のプロトコルのOPTIMA試験が実施され，併用群の関節破壊の抑制は約9割と，わが国に比べより良好な成績が報告されています。
また、アダリムマブ（ADA）は，メソトレキセート（MTX）併用から6カ月後に臨床的寛解（DAS28-ESR＜2.6）が得られた43例にアダリムマブ（ADA）を休薬させ，さらに6カ月後に寛解維持されているかどうかを評価した。
結果は，59％（20例）が寛解維持（DAS-REM）を，18％（6例）が低疾患活動性を維持（DAS-LDA）していることが明らかになったといいます。今後アダリムマブ（ADA）は，メソトレキセート（MTX）併用療法で臨床的寛解に達した場合、休薬して再発がないのか、あるいは副作用を含めてリスク・ベネフィットはどうなのかの慎重なデータ蓄積が必要です。