関節リウマチ医学最新ニュース（５２）
制御性T細胞を用いた治療で関節炎の組織傷害を抑制
ロンドン大学（ロンドン）免疫学のHans J. Stauss博士らは、関節炎に対する抗原特異的な制御性T細胞（Treg）を用いた治療により、過剰な自己免疫応答の低下と免疫系全体を抑制する薬剤の必要性を減らすことが可能かもしれないと発表しました（Proceedings of the National Academy of Sciences，USA（2009; 106: 19078-19083））。
免疫抑制なしに標的組織の傷害抑制能を持つ抗原特異的な制御性T細胞（Treg）を短時間に誘導でき、病原性T細胞に認識される抗原が不明な自己免疫による組織傷害の治療の可能性に道を開くと期待しています。
実験では、関節炎に対する抗原特異的な制御性T細胞（Treg）を関節炎マウスの血液内に投与し、免疫抑制効果があったといいます。
これを人体に投与した場合はどうなるのでしょうか？不都合な局所の免疫反応を抑制して、しかも全身の免疫系に影響を与えないことが可能なのでしょうか？
まだ現在の現代医療治療モデルが「部分最適が全体ではマイナスになる可能性」を考慮していないことがこのような実験でも伺い知ることができますね。
Stauss博士らはマウスを用いた実験で，Tregを誘導する2つの戦略が，誘因にかかわらず炎症反応を抑制するか否かを検討しました。
1つ目の手法ではTregにT細胞受容体（TCR）遺伝子を，また2つ目の手法では正常なCD4陽性T細胞（ヘルパーＴ細胞）にTCRとFoxP3を導入することで，抗原に特異的な制御機能を付与しました。その後，誘導した制御性T細胞を関節炎のモデルマウスに静注し，免疫抑制効果を検討しました。
その結果，誘導したTregは関節炎の部位に蓄積し，この部位における炎症と骨破壊が抑制されました。
同博士らは「今回の方法を用いれば，また，今回の知見は傷害を伴い，病原性T細胞に認識される抗原が不明な自己免疫による組織傷害の治療の可能性に道を開くものだ」と述べている。