関節リウマチ医学最新ニュース（６２）
抗RANKL抗体denosumab
びらんの抑制など関節破壊防止に有効
関節リウマチの治療は、関節痛・関節腫張等の症状改善を目的とするばかりでなく、最近では関節破壊の阻止を目的とする方向にあります。
現在使用されている生物学的製剤はサイトカインを抑制する治療薬ですが、denosumabという医薬品は関節破壊を予防または軽減する目的で作成されたものです。
骨代謝制御の中心的なシグナル分子であるRANKLを抑制的に調整する抗RANKL抗体denosumabは、欧米では既に原発性骨粗鬆症などに 対して市販されています。
骨芽細胞により発現するタンパクであるNF-κB活性化受容体リガンド（RANKL）は、破骨細胞の分化、活性化及び生存延長の主要な仲介者（メディエータ ）で、NF-κB活性化受容体（RANK）と結合します。
通常、滑膜には骨芽細胞は存在しませんが、TNFαなどのサイトカインが滑膜線維芽細胞やT細胞を刺激して、本来は発現していないRANKLを発現させ、 RANKLが骨芽細胞に成り代わって破骨細胞を成熟・活性化させることにより、関節障害が形成されていきます。したがって、 RANKLを抑えることが関節リウマチ（RA）の関節破壊抑制につながります。
海外で行われた第Ⅱ相試験は、男女の関節リウマチ（RA）患者300例（平均年齢57歳）を対象にしたもので、プラセボ、同薬60mg、180mgの3群にランダムに割り付け12か月間実施しました。
その結果、1次評価項目である6か月後での手指関節のMRIびらんスコアは、プラセボ群1.75に対し、同薬60mg群では0.13、180mg群では 0.06にまで低下し、180mg群での効果は有意でした。X線で見たシャープスコア（骨びらん）も、プラセボ群では経時的に上昇（びらんが進行）したのに対して、同薬の両群ではほとんど進行しないことが明らかとなりました。さらに、骨吸収マーカーも同薬の両群で低下しており、骨吸収が抑制されたことが示されました（Arthritis Care Res 2010; 62: 569-74.）。
関節リウマチの骨破壊を抑制するのであれば、有望な薬といえそうです。用量が増えると副作用の心配がありますので、その報告を待ちたいと思います。