ステロイドの副作用について(2)
慢性炎症疾患の方にはイライラ、焦燥感、敵意、うつ症状などが少なからず認められますが、これらの症状はステロイド使用による脳への副作用でもあります。ステロイドを減量していくとこのような精神症状がなくなる方もおられます。
さて、日本には「可愛い子供には旅をさせよ。」という教訓が古くからあります。
これには二つの深い意味が隠されています。
- 1.幼少時には十分愛情をかけて面倒を見てあげること。
- 2.親離れの時期が来たら、そのときには過保護は危険である。多少の苦労をさせなければ外界でのストレスに耐えられない。
というものです。皆様、ご存じでしたでしょうか?
ステロイドというのはこの可愛い子供(感染などで炎症が起こっている自分の細胞)を過保護にするものです。炎症という多少の苦労をさせないとストレス耐性(ストレスタンパクという防壁を築けない)ができません。
可愛い子供に悪い誘いや危険が及ぶときには、両親は目を光らせて、一時的に過保護にしておかなければいけません。細胞の炎症についても全く同じです。
あまりにも強い炎症が続くとフリーラジカルが増大し、周囲の組織まで破壊されていきますので、一時的にステロイドで過保護にすることも必要なときがあります。
これが「ステロイドパルス療法」というもので、数日間に限って、大量のステロイドを投与するものです。嵐が去った後は、持続的にステロイドを投与することはありません。それは逆にストレス耐性を下げてしまうばかりでなく、感染を拡大してしまうからです。
一見治癒効果を認めるような量のステロイド(グルココルチコイド)を投与すると必ず、慢性感染症、骨粗鬆症、糖尿病、うつなどの精神症状を出します。
これは、まさにストレス耐性が下がった、つまり過保護よる副作用です。
私が唯一、この例外として認めているものは、比較的高齢者の慢性炎症疾患に対するステロイドの少量持続投与(プレドニンとして1日5mgまで)です。
比較的高齢者の慢性炎症、老化、ガン、血管障害などの中にはあきらかな感染源がなく、また細胞内感染のように証明ができない類の感染(外因性の引き金)があったとしても、それよりも内因性の引き金であるミトコンドリアのフリーラジカル(活性酸素)発生によって持続的に炎症反応、ストレス反応が繰り返されていることによる酸化ストレスにされられているものがあるからです。
ちなみにほとんどの医師がご存知ないのですが、医学的には経口プレドニゾロン20mgを2週間以上で重篤な「免疫抑制状態」とみなします。 つまり、AIDSや白血病、ガンなどで免疫力が極端に低下している状態と同じとみなすのです。
この量のステロイドを服用している方には生ワクチンなどは接種できないことになっています(生ワクチンそのもので感染してしまうという理由からです)。
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