リウマチの原因（２）
リウマチ・膠原病・自己免疫疾患・アレルギー性疾患などの慢性炎症は、先進国での著しい増加から、私たちのライフスタイルが原因となっていることを小冊子やメールマガジンでお話しています。実際に第2次世界大戦後，ほぼすべての先進工業国でそうした現象が観察されています。この一部は衛生仮説とよばれています。
免疫系は感染から自己を守る必要性が低下した場合，自己の構成成分または外因性非感染性蛋白質すなわちアレルゲンに過剰に反応し始めるという仮説です。
この説は当たらずとも遠からずで、寿命の延長の結果、若いときの感染防御機構が慢性炎症を引き起こしてしまうメカニズムが私たちには備わっています。 そのキープレイヤーが細胞内ミトコンドリアであることは重要な事実です。
さて、この衛生仮説を明らかにしようというＥＵ諸国の包括的研究プロジェクトがまもなく開始されます。5か国12施設が参加する同プロジェクトの対象は，フィンランド，エストニア，北西ロシア･カレリアの小児7,000例。それぞれの国で，300例以上の小児を出生時から3歳の誕生日まで，さらに2,000例を3?5歳の誕生日まで追跡する予定です。
これまでの研究によると，フィンランドの小児は，ロシア･カレリアの小児と比べ1型糖尿病の発症率が約6倍，セリアック病の発症率が約5倍高い。しかし，自己免疫疾患を発症しやすくするHLA遺伝子の変異は両集団でほぼ同等に認められる。小児期早期における感染の客観的知見としての抗体保有率は，ロシア･カレリアの学童のほうがフィンランドの学童よりもヘリコバクター抗体で約15倍，トキソプラズマ抗体で約5倍，A型肝炎抗体で約12倍高くなっています。エンテロウイルス群に属するコクサッキーB4ウイルスの抗体保有率も，カレリアの小児のほうがかなり高い。これは、遺伝的なものがリウマチ・膠原病・自己免疫疾患・アレルギー性疾患などの慢性炎症の原因ではなく、生活習慣に起因する感染が深く発症に関与していることを示唆しています。
出生後における腸内細菌叢の発達，生活環境が腸内細菌叢の構成に与える影響，ヒトの免疫系の発達に及ぼす感染の影響，免疫反応を調節する白血球の働きなどのほか，感染によって自己免疫現象やアレルギー反応が減るとすれば，そのような防御作用は感染の量（infection load）と関連するのか，あるいは特定の微生物（の感染）によるのかなども調査されます。さらに，小児の免疫系の成熟，腸内細菌叢，感染症の発症に及ぼす栄養の影響なども調査するようです。
以上のようにリウマチ・膠原病・自己免疫疾患などの慢性炎症（がんや脳・心臓血管疾患もですが）は、生活習慣およびウイルス・バクテリアの感染がいかに深く関係しているかを世界中の医学者も注目しているのです。